裃のお勉強部屋

物理や数学のおぼえがき

トロピカル幾何というより計算(9)

GWも佳境ですね。
海外に行っていた人もいい加減帰ってきたところでしょうか。コロナだから行けないって? じゃあ沖縄でもいいや。
とにかく気軽にGoToできない分頭をトロピカルにしましょう。

さて、前回は図形の方程式からトロピカルなグラフを描くのはいかがなものか、という結論に達しました。
なので今回は先に二次式を用意して、そのトロピカルな図形と本来の図形を見ていく、博覧会的なことをしようと思います。

まずはこんな感じで、$xy$項のないものを考えます。
\begin{eqnarray*}
x^2+p y^2+x+y-1=0
\end{eqnarray*}
こいつを普通の演算で式変形してやります。
まず$p\neq 0 $から
\begin{eqnarray*}
&&\left(x+\frac{1}{2}\right)^2+ p\left( y+ \frac{1}{2p}\right)^2 =\frac{5}{4} + \frac{1}{4p}
\end{eqnarray*}
見た感じ楕円か双曲線です。左辺で割ることを考えると、左辺が0になるとちょっとまずい。
\begin{eqnarray*}
p=-\frac{1}{5}
\end{eqnarray*}
この値を境に状況が変わるというわけです。
具体的には双曲線が横に出るか、縦に出るかの違いです。もしも運悪くちょうど$p=-\frac{1}{5} $を踏んでしまうと、これは2本の直線になります。
式で書くと、
\begin{eqnarray*}
&&\rm{if}\; p=-\frac{1}{5}\\\
&&\left(x+\frac{1}{2}\right)^2-\frac{1}{5}\left( y- \frac{5}{2}\right)^2=0\\\
&&\left(x+\frac{1}{2}\right)^2=\frac{1}{5}\left( y- \frac{5}{2}\right)^2\\\
&&y=\pm \sqrt{5}\left(x+\frac{1}{2}\right)+ \frac{5}{2}
\end{eqnarray*}
です。

次に$p= 0 $
\begin{eqnarray*}
y=-\left(x+\frac{1}{2}\right)^2+\frac{5}{4}
\end{eqnarray*}
てな感じで、こいつは放物線です。

そういうわけで
\begin{eqnarray*}
x^2+p y^2+x+y-1=0
\end{eqnarray*}

\begin{eqnarray*}\begin{matrix}
p< -\frac{1}{5}&横の双曲線\\\
p= -\frac{1}{5}&2本の直線\\\
- \frac{1}{5} < p<0&縦の双曲線\\\
p=0&放物線(二次関数)\\\
0< p&楕円\\\
(p=1)&(真円)
\end{matrix}\end{eqnarray*}
てな感じで分けられるので、せいぜいこの6パターンを調べればよさそうです。

賑やかですね。上から順に
\begin{eqnarray*}\begin{matrix}
p=-1&横の双曲線&青\\\
p= -\frac{1}{5}&2本の直線&赤\\\
p=-0.18&縦の双曲線&緑\\\
p=0&放物線(二次関数)&イエロー\\\
p=1&真円&マゼンタ\\\
p=2&楕円&シアン
\end{matrix}\end{eqnarray*}
の場合を書いてます。

ここまでは高校の範囲ですね。
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さて、対応するトロピカルな三次元グラフですが、結局見る関数が、
\begin{eqnarray*}
&&x\uparrow_t2\oplus p\otimes y x\uparrow_t 2 x \oplus x \oplus y \oplus-1\\\
&=&\max{(2x,2y+p,x,y,-1)}
\end{eqnarray*}
ですから、移動するのは$2y+p$の面だけということです。








上の$p$の値に対応するよう、左から並べてあります。
つまり一番左が$p=1$、一番右が$p=2$です。
こんな感じでマゼンタの$2y+p$の面が迫ってきているのがわかります。
それによって、シアン($y$)、黄色($-1$)の面が侵食されているわけです。
一番左の画像$p=-1$のとき、交線を$x-y$平面上に下ろすと、こんな感じです。

このグラフの赤線、(マゼンタ:$z=2y+p$とシアン:$z=y$の交線)が、$p$が増えるごとに下へ下へといくようです。

なので、図形の様相が大きく変わるのは、$y=0$にきた時、すなわち$p=0$と、$y=-1$にきた時、すなわち$p=1$と言えそうです。
試しに$p=0.5$を書いてみますと、

また、$p=2$では、

となるわけです。

なので、





\begin{eqnarray*}\begin{matrix}
p&通常グラフ&トロピカルグラフ\\\
p< -\frac{1}{5}&横の双曲線&\\\
p= -\frac{1}{5}&2本の直線&左の図\\\
- \frac{1}{5} < p<0&縦の双曲線&\\\
p=0&放物線&-----\\\
0< p<1&縦長の楕円&中央の図\\\
p=1&真円&------\\\
1< p&横長の楕円&右の図
\end{matrix}\end{eqnarray*}
という対応を書くことができます。

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時に、前回の疑問として、$x$項を$1\otimes x=x+1$とするかという問題ですが、少なくとも今回に関しては図形の様相は変わりません。
ただ、やってみるとわかりますが$p$の値が$1$と$3$で状況が変わるという結果が出るので、現実の二次曲線との対応がつくなぁという点で今回は$x$項は$x$のまま扱ってます。

しかしながら、$p=0$にしたり$p=1$にしたりな$y$に対し、他の項は係数$0$とみなしていることになるのでなんだか気持ち悪いんですよね。

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さて、こんな感じで二次曲線を書けたわけですが、やっぱり一枚しか面が動かないのは面白く無さそうです。
そういうわけで次回はいろんな二次曲線を書いてみることにします。