裃のお勉強部屋

物理や数学のおぼえがき

トロピカル幾何学というより計算(7)

ずっとこうしてトロピカルなことをしているわけですが、ちょっとここらでもう少しトロピカルなグラフの話を見ていこうかと思います。
とは言ってもちょっと書くだけですが。

☆★☆トロピカルおさらい☆★☆

  • 足し算は大きい方を答えるよ!
  • 掛け算は普通の足し算をするよ!
  • 一番小さい元$-\infty$を認めるよ!

どんなグラフが描けるか見る前に予想してみましょう。一つ目の例
\begin{eqnarray*}
f(x)&=&x\oplus 1\\\
&=&\max{(x,1)}\\\
&=&
\begin{cases}
1&(x< 1)\\\
x&(x\geq 1)
\end{cases}
\end{eqnarray*}
つまり、連続ですけど折れますね。
書いてみたのがこちら。
(前回の図の使い回しじゃねぇか)

二つ目の例
\begin{eqnarray*}
f(x)&=&x^2\oplus (x\otimes 1)\oplus 1\\\
&=&\max{(2x,x+1,1)}\\\
&=&
\begin{cases}
1&(x< 0)\\\
x&(0\leq x< 1)\\\
2x&(1\leq x)
\end{cases}
\end{eqnarray*}

こんなふうに、トロピカルの冪級数多項式は$x$を大きくしていくとどこかでトロピカルでの指数、すなわち普通の計算での係数の大きい項がどこかで他の項に勝って、段々と折れていく線になるといえます。
普通の計算での係数、つまりトロピカルの指数が$x$の増加と共に増えるのですから、関数、傾き共に単調増加になっているわけです。

つまり、僕らが$n$次関数なんて言って書いてる諸々は全部直線の集まりになるってことです。

もちろん、冪関数が直線になるのは、計算の重さをだいぶ削減できるので便利そうです。

しかし、トロピカルの上でもなんとか曲線を出せないかなぁと考えるのが人情かなと思います。
そこはどんな世界でも平等にあるべきです。多様性を持たせたいの。
以前出てきたように、トロピカルのテトレーション、つまり冪乗の繰り返し関数は実世界の冪関数に対応するのでしたから、テトレーションを含む多項式なら直線以外の形がグラフ上にでできます。
たとえば$x \uparrow^2_t2=x \uparrow_t x=x^2$というわけです。
たとえば前回出てきた、
なんかが良い例でしょう。
こういうテトレーションの混じった関数だの単調増加は言えなくなります。

二次元で書くところはひとまずこんなものにして、2変数関数を考えてみますか。
たとえば、
\begin{eqnarray*}
x\oplus y \oplus 1
\end{eqnarray*}
これは3次元で書くと、





こんなかんじです。三枚の平面で表されます。

応用上よく使われるのは、トロピカル多様体というものらしく、これはちょうど二平面の交線で表されます。
それを$x-y$平面上($z=0$の面)に落として書き込むことが多くあります。検索するといろんな図柄が出てきます。
今回の場合なら、

こんな感じですわ。
(手元のアプリでどう書けばいいかわからないから手書きです。はみ出とるな……)

この調子でやると、たとえばトロピカルな円の式や、トロピカルな双曲線、楕円とかなんかも描けるはずです。

そういう諸々はまた次回以降。